胃癌に対するロボット手術の現状と展望

摘要

ロボット支援下胃切除術は，内視鏡手術支援ロボットda Vinci? Surgical Systemを使用し高解像度三次元画像，多関 節機能をもつ鉗子，手ぶれ防止機能，motion scalingの機能をいかして従来の鏡視下手術で問題とされる可動域制限などの 欠点を補うとともに，術者のより直感的な手術操作を可能とする。胃癌に対するロボット支援下胃切除術は2003年に世界で 初めて報告され，日本，韓国，イタリアを中心としてロボット支援下胃切除術が発展してきた。当科では2012年にロボット 支援下胃切除術を導入し，ロボット支援下胃切除の安全性を評価する目的で前向きの臨床第n相試験を実施し，その安全性 を報告してきた。ロボット支援下胃切除術は従来の腹腔鏡手術と比較して，手術時間が延長，出血量の減少，術後合併症の 低減の可能性が報告されている。しかしながら，ロボット支援下胃切除術に関しての無作為化比較試験の報告はなく，短期-長期成績に関してのェビデンスは明らかではない。2018年4月にロボット支援下胃切除術が保険収載され，今後急速に普及 していくことが予想されるが，安全な普及のための体制の確立およびェビデンスの構築が必要とされる。本稿では，胃癌に 対するロボット支援下手術の現状，展望に関して概説する。