在宅医療と電子カルテネットワークシステム　わかしお医療ネットワークの現状と将来

摘要

在宅医療を円滑に進めるためには患者の在宅医療に対する漠然とした不安を取り除くことが重要と考えられる。 在宅医療では入院医療と異なり，診療所，訪問看護ステーション，ケースワーカーなど様々な職種の人々が介在することになる。 従来の紙ベースの情報伝達方式では，患者に関する情報の伝達が十分ではなく，このことも入院から在宅へ移行する際の不安材料の一つになっていると考えられる。 この解決策の一つとして，1地域，1患者，1カルテを実現すること，すなわち電子カルテで地域中核病院と診療所，訪問看護ステーション，保健所などをネットワ」クで結ぶ方法があげられる。 これにより，地域中核病院で入院治療した患者が在宅に移行する場合，在宅主治医となる診療所の医師が中核病院の診療記録，看護記録，検査データ，各種画像をネット上で閲覧できることで，患者の治療経過と現状を十分把握できるだけでなく，訪問着護師，診療所の医師などがモバイル端末をもって往診にいき，必要なデータを入力することで地域中核病院でも在宅患者の状態を把握できることになる。 結果として治療の継続性を担保できるだけでなく，在宅患者の急変時に地域中核病院へのスムーズな受け入れと迅速な治療が可能となり，多少なりとも患者の不安を取り除くことができると考えられる。当院では以上のようなコンセプトでわかしお医療ネットワークを立ち上げ，平成13年度の経済産業省のプロジェクトに採択された。