(J090)TOF 型中性子回折を用いた相分率·集合組織同時定量測定

摘要

複数の相が共存した微細組織を持つ材料では、相の存在比（相分率）が材料の性能を支配する重要な因子となる。例えばマルテンサイト·ベイナイト組織を有する材料には、しばしばオーステナイト相が残留し、その存在率が延性、強度に影響を及ぼす。また、加工誘起変態を生じる材料では、相分率はその変形·変態挙動を特徴づける重要な情報の一つである。相分率を求める方法としては、X 線や中性子線の回折強度に基づく方法が広く知られている。しかし対象試料が集合組織を持っている場合、試料方向により回折強度の大小が生じるため、分析値に大きな誤差が生じることがある。著者らはJ-PARC 物質生命科学実験施設に設置されているTOF 型中性子回折計iMATERIA (BL20)において、鋼材の集合組織の高速測定法を開発した1)。この解析法はRietveld texture analysis と呼ばれ、集合組織の解析法として優れているだけでなく、集合組織の影響を原理的に加味し、補正を行うRietveld解析でもある。このため、相分率の決定も同時に行うことが可能である。本研究ではこの方法で求められる相分率の精度を実験的に検証した。