1970 年代から始まったCALPHAD(Calculation of PhaseDiagrams)法に代表される現象論的計算手法の著しい発展によって状態図研究は大きな躍進を遂げ,物質探索や材料設計において「物質の地図」の役割を十分に果たしてきた.しかし実際の材料では平衡状態における組織をそのまま用いることはむしろまれであり,多かれ少なかれ何らかの準安定相が特性に影響を与えている場合が多い.たとえば鉄鋼材料のマルテンサイトやベイナイト変態をはじめとする変態強化,準安定析出物を利用した時効硬化はその典型的な事例である.このような工業的重要性にもかかわらず,準安定相の生成要因や動的形成過程についてはいまだに不明な点が多い.これは準安定状態の熱力学的物性値を実験的にも計算によっても決定することが困難であることが一つの要因である.そこで本研究では第一原理計算によってこのような実測できない熱力学量を推算し,状態図計算に応用する手法について検討した
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