水素放出プロファイルにおける水素拡散の影響－数値シミュレーションによる考察－

摘要

高張力鋼の遅れ破壊の要因の一つとして水素による粒界脆化 が考えられている[1]。その現象の解明のためには、粒界への水 素偏析量を見積もることが重要であり、昇温脱離分析による水 素放出プロファイルの解析が主に用いられている。我々はこれ まで、Oriani の局所平衡仮説とトラップ?デトラップ過程から水 素放出プロファイルを再現する数値モデルによって、純鉄の1 つのピークを示すプロファイルと共析鋼の２つのピークを示す プロファイルを再現し、欠陥や水素の量を推定した[2]。つまり 拡散による水素濃度の平均化過程が非常に速いとの仮定に基づ き拡散の効果を考慮しないモデルで実験によるプロファイルの 再現が可能となった。本発表では、プロファイルに対する水素 拡散の影響について、数値モデルも含めて比較検討する。