大腸癌の発癌機序：概論(分子機構，多段階発癌機序含めて）

摘要

年齢は癌の罹患率にとって驚くほど大きな因 子であることはよく知られた事実である.例えば70歳の男性は10歳の男性より，大腸癌で死 亡する危険性は1,000倍も高い.癌の発生には 長い時間が必要であり，疫学的な研究から，癌 による死亡の危険性は生存時間のおよそ5-6 乗に比例することが知られている.この年齢と 死亡率との関係と，60-70歳代で死亡率が急上 昇するという事実から，致死的な癌の形成には， 6個程度の律速事象を完了する多段階過程を経 ていることを，疫学的な研究は示唆している異形度が増すことに伴い，腫瘍の悪性度が上 昇することは組織病理学的にも明らかであり， 腫瘍の発達は多段階過程を経ていることを示し ている.本稿では多段階発癌に関わる分子機構について概説する.