左心系疾患に伴う肺高血圧症はニース分類およびわが国の肺高血圧症治療ガイドラインでグループ2(PH due to left heart disease)に分類される.本疾患はその成因より,の収縮不全(左室収縮機能の低下に基づく心 不全),②拡張不全(左室拡張機能の低下に基づく心不全),弁膜症,および先天性?後天性の左心流入路, 流出路閉塞の4種のカテゴリーに分類されている.左心系疾患に肺高血圧を合併する頻度は高く ,左心不全の 60~70%近くに肺高血圧を合併するとの報告もある.機序については,上昇した肺静脈圧が肺毛細血管を介 して肺動脈系へ伝播されることによって引き起こされるとされている(passive).この状態が持続すると肺動 脈の反射性の収縮が起こり,肺動脈圧は上昇し,さらには細動脈レベルでの解剖学的変化(リモデリング)も生 じ,肺高血圧は進行する(reactive).この状態はout of proportionとよばれていたものである.慢性心不全に 肺高血圧を合併した場合の予後は不良であり,死亡率は高く,さらには心臓移植や人工心臓といった治療に対 する大きな障壁となる.
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