プロスタグランジンD2シグナル遮断による慢性腎臓病の進行抑制

摘要

日本人の慢性腎臓病(CKD)患 者は1,330万人，予備軍も含める と2,000万人になるとされている. CKDの終末像である透析患者数 は30万人を超え，医療費30兆円 のうち透析医療に1兆円かかって いる.たとえ透析に至らなくても CKDは心血管疾患の独立した危 険因子であり，CKDは"あらたな 国民病"といわれるようになって おり，CKDの発症，進展予防が世 界的課題となっている.著者らは 進行性腎間質線維化を研究する動 物モデルとしてすでに確立してい るマウス片側尿管結紮unilateral urethral obstruction(UUO)モア ルを用いて，Th2リンパ球が亜急 性?慢性炎症の持続とそれに続く 間質線維化進展過程に重要な役割 を果たしていることを示し，Th2リンパ球に特異的に発現しているPGD2受容体であるchemoattrac-tant receptor homologous molecule expressed on TH2(CRTH2) 受容体拮抗薬を経口投与すること によって間質線維化を抑制できる ことを発見した（図1).