心臓性突然死'タイのLai-Tai'と'日本のボックリ病'の比較研究

摘要

著者らは1990年代初頭から，日本における心臓性突然死の病態とその原因の究明を目的に，武市早苗たけいち医学研究所所長(前東海大法医学教室教授）を中心に，法医学の立場から研究を進めてきたなかでも青壮年男子に多くみられる原因不明の心臓性突然死,"ポックリ病症候群"(冠動脈に動脈硬化性病変がほとんど認められず，心肥大ゃ他の明らかな器質的心疾患を伴わない突然死症候群)がそのおもな研究対象であった.このような虚血性心疾患以外の原因のはっきりしない若年の心臓性と考えられる突然死は，東京都23区での統計から判断すれば，わが国全体でおおよそ数千例程度は存在していると推定される.これは社会的にも大きな問題を提起しているが，その原因の究明ならびに対策はかならずしも十分であるとはいえない.