効率的な木質バイオマス燃焼熱併給発電システムの開発

摘要

木質バイオマスの有効利用は，林業·製材業など地場産業の活性化や循環型社会の形成，温暖化ガス削減，未活用資源による省エネルギー効果など社会に及ぼす大きな効用が期待できる．また，平成14年1月の「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法施行令の一部を改正する政令」でバイオマスのエネルギーが追加指定され，バイオマスの新エネルギーにおける法的な位置付けが明確になった．これを受けて，木質バイオマスの有効利用に対する中長期的な視点に基づく検討が近年活発になってきている．但し，木質バイオマスは林業系廃材（間伐材，林地残材（木皮），松クイ材など），公共系廃材（剪定枝，伐根材など），産業系廃材（製材廃材，合板廃材，木工業廃材，建設廃材，港湾廃材など）など形状，性状が多岐に亘り，効率的エネルギー利用のためには技術的課題が多い．また，エネルギー転換には一般的に破砕·選別·乾燥等の前処理が必要になるが，この前処理に要する動力と費用は未活用資源のエネルギー利用の有効性に大きな影響を与えかねない．保有エネルギーの約30％を消費するという試算事例もある．さらに，需要先に必要なエネルギーを得るための量の確保，収集システムが重要で経済性に多大な影響を及ぼす．従って，森林からのバイオマスをエネルギーとして有効に利用するためには，広範囲に亘り分布する資源の効率的な収集からエネルギーの需要先確保，およびその需要先の用途に見合った効率的なエネルギー回収システムなど，総合的なシステムが不可欠である．本報告では，ソフト面では地域を挙げて協力し合う資源循環型システムを構築し，ハード面では再資源化システムと排ガスの廃熱利用による乾燥システムを組み合わせた効率的熱併給発電システムの開発により，これらの課題を適切に克服し，従来未活用であった低質な木質バイオマスを効率良くエネルギー利用することに成功した発電所の事例を述べる．