再生周波数帯域の操作による臨場感·空間印象の変化

摘要

音響コンテンツの再生周波数帯域を制限することで，音特徴の知覚的印象および臨場感·空間印象がどのように変化するかを調べるために，主観評価実験を行った．市販のDVDに収録されているライブ演奏や自然環境音など4種類の5.1ch音源を使用し，デジタルミキサーによって再生周波数帯域を，広帯域（DVD品質），中帯域（250Hz-8kHz），狭帯域（500Hz-4kHz）の3段階に操作した．実験には健聴の20代～40代の成人女性40 名が参加した．音の主観印象尺度と臨場感·空間印象尺度それぞれについて，音源ごとに各帯域での評価プロファイルを作成し，比較した．その結果，全体としては狭帯域化によって印象が低下すること，音の主観印象よりも臨場感·空間印象の方が狭帯域化の影響が大きいことが示された．また，一部の音源については，いずれの尺度においても狭帯域化による印象の変化がほとんどみられなかった．いわゆる「音質」の知覚だけでなく，臨場感や感動といったユーザー体験が，音響の物理的品質に影響されることが示唆された．