精神分裂病における聴覚·言語処理異常への神経生理学的アプローチ

摘要

精神分裂病（または統合失調症、以下分裂病）の認知障害は、言語性記憶·思考·文脈の理解など言語に関連する機能の障害が強いとされる。 こうした制御的な機能障害に関する研究が進んできた一方、聴覚言語処理の根本である音韻の処理の障害に関する基礎的な検討が不十分であった。 われわれは高解像度事象関連電位や全頭型多チャンネル脳磁図計測を用いて、分裂病の自動的音韻処理過程における前頭前皮質や上側頭回の異常を見出した。 こうした認知障害の基盤をなす脳構造異常について、MRI 体積測定を行ったところ、初発分裂病患者において左側上側頭回灰自質体積の減少を認め、さらに初発後1.5年で平均約9％の進行性減少を認めた。 これらの脳機能·構造障害が分裂病の聴覚言語処理異常の基盤となっている可能性がある。