電流出力型位相比較器の使い方：PLL回路の低位相雑音化の一手法（前編）－電流出力型の特徴

摘要

PLL (Phase Locked Loop)回路は，水晶発振器などから出力される一定の周波数を元に，さまざまな周波数を作りだす（周波数合成）ことができます．PLL回路は，周波数合成の手法として，通信機器や計測器．そしてモータの回転制御など，いろいろな分野で使用されています．携帯電話や無線LANなどの高速データ通信に応用されるPLLでは，信号の純度を示す位相雑音特性が重要です．位相雑音にはPLL回路内のすべての要素が関わりますが，原理的に位相雑音を改善できる方法として，位相比較器のタイプを変える方法が知られています．1.位相雑音を小さくできる電流出力型の位相比較器：一般的な位相比較器は電圧出力型ですが，これを電流出力型にします．電圧出力型に比べ，位相差0°付近の直線性に優れており，負帰還のループ·ゲインも高くなるので，発振周波数近傍の位相雑音を小さくできるといわれています．2.後段に接続されるループ·フィルタの変更も必要電流出力型の位相比較器は，単純に電圧出力型の位相比較器と置き換えるわけにはいきません，位相比較器の後ろに接続されるループ·フィルタもあわせて変更する必要があります．3.電流出力型位相比較器の動作を解説：本稿は，前後編の2回で，電流出力型位相比較器について解説します．今回は，電圧出力型との違いや基本的な動作について解説します．次回は，ループ·フィルタの設計法についての解説です．PLL周波数シンセサイザに使うループ·フィルタを2種類設計して，データを比較してみます．