磁界共鳴型無線電力伝送に伴う電磁界による体内誘導量解析

摘要

近年，無線電力伝送の実用化に向けた動向に注目が集まる一方で，無線電力伝送に伴う電磁界の人体に与える影響について関心が寄せられている．しかしながら，無線電力伝送に対するドシメトリを行った例は少なく，有効な計算手法の確立はなされていない．本稿では，10MHz帯を対象に，その計算手法の提案と有効性の検討を行った．まず，10MHz帯における準静近似の有効性について検討するために，均質円柱モデルの有無による磁界分布の比較を行った．次に，MoM（Method of Moments）とSPFD（Scalar Potential Finite Difference）法を用いた準静近似に基づく2段階解析手法を提案し，full-wave電磁界解析手法と準静的解析手法を用いて解析じた円柱モデル内の誘導量の比較を行うことで，準静的解析手法の有効性について検討した．その結果，円柱モデルの有無によらず磁界分布は同様の傾向を示し，2つ分布の差異は4.8％程度となった．人体とコイルの距離を10mmとした場合，電磁界解析と準静的解析により計算した局所ピークSARの差異は最大で7.8％程度であり，距離を5mmとした場合の差異は最大で4.2％程度となった．以上の結果より，10MHz帯において本稿で提案する準静近似に基づく2段階の解析手法の有効性を確認した．