ツリウム添加光ファイバ増幅器における信号光波数およびレベル変動による利得スペクトル変化の補償方式

摘要

ツリウム(Tm)添加光ファイバ増幅器：TDFAは、Sバンドにおける光増幅の手段として近年注目を集めている。 EDFAでは、Erイオンが光増幅に関わる4{sup left}I{sub}(13/2)，4{sup left}I{sub}(15/2)の2準位にしか存在しなかったのに対し、TDFAでは、Tmイオンが実効的に3{sup left}H{sub}4、3{sup left}F{sub}4、3{sup left}H{sub}6の3準位に存在する為、複雑な利得変動が発生する。 本報告では、光波ネットワークにおいて予測される、区間ロス（即ち信号光入力レベル）や信号光波数、および環境温度の変動に際して、TDFAの利得スペクトルが示す挙動を報告する。尚、信号レベル変動時は出力レベルー定制御（ALC）、波数変動時は利得一定制御（AGC）の下でTDFAを駆動した。EDFA との際立った相違として、ALCのみならずAGC駆動時も顕著な利得傾斜が発生する。 全入力レベルおよび波数範囲での利得傾斜を補償する方策として、①1.56μm帯励起パワー、②可変光減衰器(VOA)、③可変損失傾斜器(VASC)による3つの調整方式を比較した。 ①はAGC時に有効だが、ALC時にパスバンド両端と中央部の間のレベル偏差が避けられなかった。 ②はNFが2dB以上劣化する等の欠点があった。 ③のVASCによる制御方式は、ALC、AGC何れの制御時にも損失傾斜可変範囲の及ぶ限り有効であった。本方式により、ダイナミックレンジ：－27dBm/ch±4dB、波数：4～32の全動作領域で、1460.3～1482.7nm め波長域で信号出力レベル変動が0.2dBp－Pの範囲に維持できることを示した。 また、環境温度が変化した時もTDFAは直線的な利得変動を呈し、VASCにより良好に補償され得ることを示した。