海洋深層水配管－国内初のプラスチック被覆鋼管による海洋深層水取水技術の開発

摘要

海洋深層水は、低温安定性、清浄性、富栄養性の特性を有しており、さらに表層の海水が冷やされ、深層に沈み込むため再生可能な循環型資源として注目されている。 なかでも、魚介類の養殖や蓄養では清浄性や富栄養性に優れることから、病気の発生を抑制でき、抗生物質の投与を少なくできることや成長が早いといった研究成果が報告されており、安全·安心な養殖魚介類の提供に期待が寄せられている。 その一方で、従来の海洋深層水取水技術では、取水温度に柔軟性がなく、海洋深層水を低温状態のまま取水するため、冷水魚等を除く魚介類の飼育には適さず、表層海水と混合するか、あるいはボイラー等で加熱し、水温を上げる必要があった。このため、表層海水の取水施設やボイラー等のイニシャルコスト、さらに表層海水取水ポンプやボイラー等のランニングコストが必要となる課題があった。 筆者らは、離島給水や石油·ガス輸送等のパイプライン技術と製鉄所の水道用における水処理技術で培ってきたエンジニアリングを組み合わせ海洋深層水の取水から陸上まで一貫した利活用に向け事業に取り組んでいる。 上記課題に対しては、海洋深層水が取水管内部を通過して汲み上がる過程の取水管周囲の海水温度に着日し、この熱エネルギーを利用して、取水管内部の深層水の取水温度を制御できれば、そのための陸上設備を追加せずに利用目的に適した水産利用が可能と考え、取水温度制御技術を確立した。 本稿では、新潟県佐渡市の海洋深層水に技術提案し採用されたプラスチック被覆鋼管による海洋深層水の取水温度制御技術、海洋深層水の取水温度シミュレーションおよび取水管敷設後の取水温度の検証結果について報告する。