ネパールにおける湿地保全と生物多様性

摘要

比較的小さなエリアでも変化に富む標高や多彩な地形をもつネパールは，実に多様な気候条件を備えているため，ユニークで多様な湿地生態系をもっている。 このことは，世界的に重要とされる27の内陸型河川湿地のうち，20がネパールに存在していることに示されている。 ネパールの湿地についての包括的な調査はまだ行われていないが，ある推計によれは，国土の総面積の5％（75万ha）が湿地帯で占められている。河川氾濫原，氷河湖，U字形湾曲河川，温泉，池，沼地などを含めて，約240の重要な淡水湿地が存在する。 ネパールの南部に位置する平原〔現地ではテライ（terai）と呼ばれている〕には，非常に重要な大小163ケ所に及ぶ湿地が存在する（IUCN，1998）。 これらのうち10ケ所は世界的に見ても重要とされている（ネパール生物多様性国家戦略，2000年）。 そのなかでも特にテライ東部に位置する湿地帯にあるコシタップ（Koshi Tappu）野生生物保護区は，2万羽以上の水鳥が生息し，1998年にラムサール条約の指定地として認定された。 そこには特有の動植物が生息し，遺伝的および生態的な多様性が維持されている。 また，ネパール政府は，テライの東部から西部へと広がっている他の3つの地域(Beeshajari Tal湖, Jagdishpur池, Ghlodaghodi湖）も，ラムサール条約の指定地リストに含めるための申請をすでに行っている。