現代左官事情（その15）「土壁V」

摘要

土壁仕上げに最適なのは小舞下地であるが、近年、一部の領域でしか使用されなくなった。 また、それに伴い本格的土物を壁面とすることが少なくなった。 現在では伝統工法といわれる施工法でも小舞以外の下地を用いてセメントモルタル·石灰系·あるいはせっこうプラスターなどで中塗りをし、上塗りだけを日本壁にするケースもある。 しかし、これらの簡易な下地と比較すると、日本壁の仕上げの肌は中塗りに壁土を使用した場合に比べ見劣りすることは否めない。 従来より、日本壁を代表する大津磨きや漆喰磨きのような、鎮圧をかけて仕」二げるものでは、小舞下地に土壁が最良とされてきた。 しかし、時代の変遷で『少しでも施工費が安く、工期が早くて土壁を』という要望から、ラスボード下地に土壁を塗る工法があまり一般には知られていないが用いられている。 これも、左官職人が工夫して生み出した工法ともいえる。 ここでは2回にわたり概略を紹介する。