建築基準法「性能規定化」の現状に関する問題点と提言--有識者によるアンケート結果を踏まえて

摘要

近年の社会·経済情勢の変化や価値観の多様化に相俟って、建築構造の分野においても建築主、ユーザーの要求の多様化が見られ、それに応じて災害時の高度な安全性や機能性、快適な居住性、財産としての建築物の保全、さらにはライフサイクルコストの考え方の普及による経年変化に対する性能の維持などに応えることが重要な課題になっている。 建築物の構造性能に関して、設計者が、「要求される性能」を把捉して設計における「目標性能」を明確に設定し、「性能検証」によって、その目標が満足されることを確認するという、いわゆる性能を規範とした設計を行うことが、これらの課題への取り組みになると考えられる。 このような背景のもと、建設省では1995（平成7）年度から1997（平成9）年度にかけて建設省総合技術開発プロジェクト「新建築構造体系の開発」が実施されたが、相前後して生じた貿易摩擦や阪神·淡路大震災といった外的圧力などの要因もあり、建築基準法における「性能規定化」が推進されることにもなった。