高原子効率的反応を目指した不斉反応場の構築:キラルなサレン錯体の活用

摘要

サリテルアルデヒド二分子とエチレンジアミン一分子から脱水縮合により得られる化合物は通称"サレン"と呼ばれ，数多くの遷移金属イオンと四配位キレート錯体を形成することが知られている（図1）。 その歴史は古く，例えば葉木らはサレン－コバルト錯体（通称サルコミン）が可逆的に分子状酸素を脱着することを半世紀以上も前に見出し，脚光を浴びた。 そして近年，キラルなサレン金属錯体の特異な触媒機能と高い不斉誘起能が注目されている。 サレン錯体の魅力の1つはその合成法の容易さにあり，各種のエチレンジアミン，サリテルアルデヒド，および金属塩をモジュールとして目的の反応場を自在に構築できることである。