ヒト複合型糖鎖ライブラリ－の半化学合成と糖ペプチドおよび糖タンパク質の化学合成

摘要

タンパク質は，メッセンジャーRNAのコドンにそって翻訳され，ポリペプチド鎖を構築すると特定の3次元構造を形成する。 タンパク質は，翻訳中，あるいは翻訳後に様々な修飾を受ける。 この修飾は，タンパク質の機能発現に必要不可欠なもので，いくつかの様式に分類することができる。 シグナル伝達のためのリン酸化，タンパク質分解のためのエビキチン化，細胞膜内側へのタンパク質の固定化のための脂質化，そして細胞同士の接着，認識あるいはタンパク質輸送のためのグリコシル化である。 これらの修飾によってタンパク質の物理化学的別性質が調整される。 これら修飾のなかで，頻度の高いものがグリコシル化で，一般にヒト体内のタンパク質の50％近くがグリコシル化されており，これらを糖タンパク質という。 このグリコシル化では，多様な糖鎖構造の付加が起こるために，どのような糖鎖構造がタンパク質の機能発現に必須なのか明らかにすることが困難である。 タンパク質に付加する糖鎖は，2つのグループにわけることができる。 タンパク質主鎖のアスパラギン残基の側鎖の窒素原子に結合したN－型糖鎖とセリン／トレオニンの側鎖のアルコールに結合したO－型糖鎖である。 このO－型糖鎖は，さらに8つのグループに分類され，N-塑糖鎖は，複合型，ハイプリーツド型，高マンノース型の3つに分類される。 N－型糖鎖は，特に多様な構造を形成し，複合型においては，2－4分岐構造が頻度よく見出される。