運転士の睡眠時無呼吸症候群を考える

摘要

新幹線の運転士による居眠り運転が，今年の2月にマスコミで広く取り上げられたことは記憶に新しい。 幸いにも列車は自動的に停車したため大事故には至らなかった。 しかし事件直後の報道では，この運転士は前日の夜には10時間の睡眠をとっており，出勤時の点呼の際にも特に異常が見られなかったため，運転士の居眠りを"気の緩み"によるものだという論調で評したものが多くみられた。 また加えてその後に，運転士の前夜の飲酒量についても明らかになり，居眠り運転はますます個人の生活態度に原因があったと強調される内容となってしまった。 最終的には運転士が睡眠時無呼吸症候群（SAS：Sleep Apnea Syndrome)であると診断され，居眠りはSASの主な症状のひとつである日中の著しい眠気によるものだと結論づけられた。 SASは，特に肥満気味の中高年男性に多いことが知られ，今回の事件の運転士もそれに当てはまる体躯であったという。