板状木材の木取りと熱伝導特性の関係

摘要

木材の熱特性の測定資料は内外ともに極めて乏しく，ISO-TC163でもその点が指摘されている。なかでも熱伝導率については，温度特性に関する多少の測定結果が見られるものの，含水特性，方向特性については解明が不十分で，その上，既往の資料には測定方法及び測定条件の不明なものが多い。研究成果が不十分な理由としては，1）天然材料であるため固体ごとに特性が異なること（育成地，樹齢，試料採取時季および部位など），2）樹種が多いこと，3）木材の熱特性に対する社会のニーズが従来大きくなかったことなどが挙げられる。しかし最近，木造住宅の良さが見直され，行政面からも地域に根ざした良質の木造住宅の普及が推奨されるようになった。さらに，近年の設備依存型の人工環境に起因する健康被害や文化財などの損傷事故が契機となって，室内環境条件に関心が集まるようになり，その結果，木材の優れた温熱環境調節機能が俄かに脚光を浴びるようになった。この研究はこうした状況を受けて，木材の熱伝導特性に関する系統的な実験，検討を行おうとするものである。従来，公表されている板状木材の熱伝導特性には，木取りによって変化する繊維の傾斜による影響について考慮したものはない。本報では、ラワンとスプルースを対象として繊維方向と熱流方向の角度を変化させた場合について測定した結果を報告する。