医用超音波：超音波による心筋の後方散乱の計測

摘要

心筋内の主な超音波散乱体は、心筋細胞を取り囲む網目状の構造をもった膠原線経からなる細胞間質であると考えられている。 心筋の収縮·弛緩に伴ってその微細構造の変化·音響インピーダンスの変化が生じるため、超音波の散乱特性も変化する。この性質を用いた心筋の組織性状診断を行うため、現在医療現場において医用超音波診断装置が利用されている。 B-mode断層像を撮像し、各フレームにおいて計測者が断層像上で関心領域(ROI)の位置と範囲を設定し、心臓壁からの後方散乱強度IB (integrated backscattering)の一拍内での変化CV (cyclic variation)を算出している。 疾病によって心筋の収縮能力が低下すると、このCVが低下することから、心筋の組織性状の診断が可能となる。 しかし、心臓壁には拍動に伴う併進運動があり、同時に心筋の伸縮により壁厚も変化するため、常に心臓の同一部位のIB信号を計測するように、マニュアルで各時刻にROIの位置と幅を適切に設定し直す必要がある。 そこでここでは、対象物の併進運動·厚み変化に応じて関心領域の位置を追跡し、同一部位からの後方散乱(IB)を一心周期にわたって計測する方法を紹介する。