摩擦·磨耗研究の最先端と問題点

摘要

摩擦研究は長い歴史をもっているといっていいだろうか。 どこから摩擦の研究が始まったかといえば，だれしも思いつくクーロンの摩擦法則の論文を最初とすれば，それはおよそ220年前。 もし，レオナルド·ダ·ヴインチの摩擦実験を最初とみれば，さらに300年遡る。 それは摩耗も同じである。 産業革命が社会構造を一変したときが，摩耗の研究の始まりでもある。それからすでに200年が経っている。 もっとも，それは科学の対象として摩擦·摩耗が研究され始めたといえるときであって，人類が摩擦摩耗と関わったのは火の発見かそれ以前ということになる。 そこまで遡る必要はないが，兎にも角にも，摩擦·摩耗の研究は何百年という年月を経て今日に至っている。 最新の摩擦·摩耗研究をみるのに，こんな古い話から始めたのには理由がある。 それは，「これだけの時間を要しても，なぜ摩擦·摩耗がわからないのか」というトライボロジストの自問自答からである。