アジアの供給過剰顕在化で日本の輸出ビジネスも先細り必至「アジアの石油流通の現状及び価格形成メカニズム調査」～平成22年9月日本エネルギー経済研究所～

摘要

日本エネルギー経済研究所は先頃，「アジアの石油流通の現状及び価格形成メカニズム調査」と題する報告書をとりまとめた。シンガポール，中国，韓国，台湾，インド及び日本の6カ国を対象に，石油需給の現状と見通し，製品貿易，価格形成の現状と課題などの整理，分析を行ったもので，アジア域内では今後，精製能力余剰が顕在化し国際間競争が激化，わが国からの軽油輸出も2015年には現在から半減する，としている。中国やインドなどを中心とする，アジアの需要増加は今後も継続し，2015年には09年比約430万BD（18％）増加する見込み。これに対する供給は，中国，インドの大幅な設備増強により2009年から2015年にかけて需要規模を約400万BD上回る状態が続く見通しだ。一方で，中国やインドを中心にコーカーやRFCCなどの重質油分解設備の新設による製油所高度化も進む。アジア域内でのガソリンと灯·軽油の輸出が活発化し，国際間競争が激化して，マージン低迷と董軽質格差の縮小が続く，としている。国内需要減退，輸出環境の悪化，マージン低下等の構造的な環境変化に直面しているわが国石油産業としては，過剰設備処理による本格的な石油需給適正化に向けた取組みの推進，優れた環境性能など日本の特性を活かした製品貿易の推進，国際競争力の強化などの課題を列挙。アジア主要国の需給状況や流通政策を見極め，中長期的な視点に立った国内の安定供給と健全なサプライチェーン構築が緊要な課題と指摘している。以下，同報告書の概要を紹介する。