世界の一次エネ需要シェア石油28％に天然ガス年率1.4％増で黄金時代に

摘要

国際エネルギー機関（IEA）は9日，「世界エネルギー展望2010」（World Energy Outlook2010：WEO）を発表。この中でIEAは世界経済は2008～2009年の未曾有の経済危機から脱しつつあるようにみえるが，依然として二番底の恐れや財政赤字の拡大を背景に先行き不透明，自信を持ってエネルギーの中期見通しを示すのは非常に困難としている。しかし，この1年間の気候変動や非効率な化石燃料補助金の改革に関する国際合意交渉，政策面で各国に際立った前進がみられたこと，及び財政出動による景気刺激策として導入した資金やインセンティブの強化が低炭素技術の開発·普及の強い追い風となったことなどが実施されるならエネルギー需要増加率はかなり低減できるともしている。これら「新政策シナリオ」をベースとした2035年までのIEAのエネルギー見通しを紹介する。IEAのWEOでの問題提起は，前例のない不確実性の時代を前提として次の5点に概ね集約されるように思う。①世界の経済危機は最悪の時期を脱したもようだが，このまま持続的に回復していくのであろうか。②石油の需給は価格に対する感応度が弱まっている（価格に対して以前ほどセンシティブに需給が変動しなくなっている）。このことば将来の石油価格にとっては何を意味しているのか。③天然ガス市場は革命的変化の真っ只中にある。これはガス黄金時代の前触れなのか。④コペンハーゲン合意とG20における補助金制度改革合意ば大きな前進ではあるが，それらの実現はまだかなり先のことであり，しかも完全に実行されるのか。⑤中国とその他新興諸国が世界のエネルギーの未来を形成していくのだが，彼らの政策決定は我々をどこへ導いていくのだろうか。こうしたIEAの問いかけにIEA自らがエネルギー需給·市場の分析と見通しを示したのがWEO2010である。そのすべてを紹介することばできないが，以下，「新政策シナリオ」による石油と天然ガスのエネルギー需給見通しの概要をコンメンタールしながら紹介する。