来期のHSC重油は2万円台へ続落自家発コストが電気料金より割安に

摘要

来期1～3月分のHSC重油（S分3.0％）価格が2万円／kl台へ急落する可能性が出てきた。 底なし状態のバブル崩壊が続いている原油相場と，独歩高傾向が止まらない円相場が重なるためだ。12月7日の時点で想定したS分3.0％のHSC重油価格は，足元のコスト状況で28,950円／kl前後，1月以降も若干の原油安と円高が続いた場合は28,150円／klとなり（支払いサイト60日，湾内ベース），ついに3万円を切ってくる。この水準は平成16年（2004）4～6月分（26,350円）以来の安値になる。 S分3.0％のHSC重油価格は，米国発の原油バブルによって競合エネルギーを上回る値上がりが続いた。 16年度平均は29,150円と3万円を切っていたが，17年度は41,900円，18年度は49,950円，19年度は59,450円と値上がりし，今年度は上期の平均が81,600円へ急騰した。 値上がりは産業界の自家発電コストを上昇させた。 一方，電力会社は小売自由化開始で値下げ攻勢を続け，産業用大口電力の単価も下がった。産業界は必要な電力を割安な電力会社からの買電へ切り替えるようになった。 自家発の消費電力量は14年度から16年度まで1,270億kWhに安定していたが，17年度1,220億kWh，18年度1,170億kWh，19年度1,150億kWhへと着実に縮小した。 しかし，値下げが繰り返されてきた電気料金も既に実質的な値上がり基調に変わり，来年1～3月分の産業用特別高圧料金は数年前の1.5倍前後へ上がる。 徹底的に安かった夜間料金も1.5～1.9倍へ上がり，割安感は消える。 1～3月では買電コストより自家発電の方が明らかに割安な状態に変わりそうで，HSC重油の需要が急増しても不思議ではないと考えられるのだが…。