製鋼ダストの酸浸出とその速度

摘要

比較的亜鉛品位の高い製鋼ダストを酸浸出し，以下の結果を得た。 硫酸浸出,塩酸浸出のいずれにおいても，比較的緩やかな浸出条件で，鉄の浸出率を10％程度に抑えたまま，亜鉛を80％程度浸出できた。 これは，本実験に用いた試料がジンクフェライトに対する粗酸化亜鉛の比率が高い試料であるためと推察される。 鉄の浸出は浸出条件の影響を強く受け，亜鉛を完全に浸出させるには，ジンクフェライトの溶解が不可欠であるため，やはり強い条件で浸出しなければならない。 硫酸浸出では鉛はほとんど浸出されないが，塩酸浸出では鉛が優先的に浸出された。 これは，硫酸鉛と塩化鉛の溶解度の違いによるものと推察される。 硫酸浸出では鉛が残液中に入り，衡査の鉄源としての利用は困難である。 塩酸浸出では残液中の鉛は無視できる程度になるが，亜鉛の塩酸浴電解など解決しなければならない問題がある。 本実験の浸出反応は，化学反応律速または固体内拡散律遠のいずれでもなく，対数則で整理できることが判明した。 これは酸に溶解しやすい粗酸化亜鉛と難溶性のジンクフェライトの溶解性の違いによるものと考えられる。 また，対数則プロットを使えば，製鋼ダスト中の粗酸化亜鉛とジンクフェライトの存在割合をある程度推測できると推察される。