揮発性有機化合物（VOCs)とは何か-排出現状と規制の比要性-

摘要

わが国における光化学オキシダントの環境基準は「1時間値が0.06ppm以下」であり、世界で最も厳しい基準となっている。わが国の地理的な位置からは、さまざまな地域からO_3を含む気塊が移流し、移流気塊の訪れる方向や頻度は季節によって大きく異なる。 人間活動の活発な中国沿海地域·朝鮮半島を通過してくる「地域的汚染大陸性気塊」は春季から夏季·初秋にかけて幅広い高原状のピークを持ち、わが国への移流時に55ppb前後に達しているため、日本海側の地点では、これらの影響が加われば、環境基準値を容易に超過してしまうと指摘されている（秋元、2000）。 さらに、最近、Najaと秋元（2004）により、大陸由来の気塊中のオゾン濃度ほ、1970～2002年の前半期では春季に濃度が最大であったものが、後半期には夏季に濃度が最大になったことが報告されており、大陸からの越境汚染が懸念されている。現に、本年5、6月には長崎県や熊本県でOx測定が開始されて以来初めての注意報が発令されている。 このような状況下で、気象要素以外の要因として、わが国のOx濃度上昇への東アジアからの越境大気汚染の寄与が示唆され、これらを考慮したデータの集積や対策が必要となっている。 また、0.04ppmを超えたO_3の暴露量と農作物収量低下や樹木衰退の関係が植物影響の観点からは考えられており、人への健康影響とともに植物旬生態系への影響なども考慮して、緑の環境基準を検討していくべきではないだろうか。 SPMに関する最近の高い環境基準達成率から、粒子状物質に関わる対策や調査研究はもはや不要とする意見もあるが、米国のPM_(2.5)環境基準値に対するわが国におけるPM_(2.5)濃度、さらには超微粒子による健康影響の懸念などを考えた場合、人為起源の微小粒子·超微小粒子に関する低減対策や調査研究など今まで以上に重要となっている。また、SPMについて、大陸からの黄砂の飛来などもあり、黄砂を明確に区別したSPM環境基準達成率の評価手法なども検討されるべきであろう。 今後は、大陸からの影響についても、地域により異なるものと、広域に影響するものとを適切に評価できるよう、更なる研究とモニタリングを充実していく必要がある。 また、光化学オキシダント問題はNO_2汚染や二次生成粒子が大部分を占めるPM_（2.5）とも密接に係っており、総合的な調査研究が望まれるところである。