最近のアスベスト被害に思う

摘要

最近、新聞紙上やテレビ、ラジオでアスベストによる死者が日に日に増加し、7月15日現在、418名に達している。 なぜこんな事態に至ったのか、防ぐ方法はなかったのか。 このようなニュースを聞きながら、昔のことがいろいろよみがえって来た。 大学院生であった1960年代前半、エアフィルタの研究を始めた。 エアフィルタは今も主流はガラス繊維の充塡填層である。いろいろな太さの積層状の繊維をはさみで切って、実験用のフィルタを作る作業を行なう際、繊維の切れ端が飛び散ったり、指に刺さったり、こんな作業を何年も続けていると、体がどうかなるのではないかと、心配したことがある。 しかしそのとき、アスベストは危険だけれどガラス繊維は大丈夫だよ、と言ったある先輩の言葉を思い出す。 当時既にアスベストを沢山吸うとじん肺になると言われており、とくに太さが0.5μm以下のものが危険なのだと教えられてきた。 同じ断熱材として利用されているガラス繊維は有害性がないのかどうか分からないが、自覚症状がないところを見ると大丈夫なのであろう。 その後1979年、シラキュース大学滞在中にカリフォルニア、バークレーにある州政府機関の研究所を訪ねたことがあり、そこで、Walter John博士からアスベストに代わる人体に無害な鉱物繊維の話を聞かされ、アメリカ政府はこの問題に真剣に取り組んでいることを実感した。