脳·髄膜感染症　細菌性,真菌性,原虫性感染症

摘要

中枢神経感染症はいわゆるtreatable dementiaの一つとして重要であり,痴呆の起こり方から, ①痴呆で発症し得る疾患, ②後遺症として痴呆を起こし得る疾患に分類できる.痴呆で発症し得る中枢神経感染症は主に,亜急性·慢性の経過で発症する髄膜炎であり,結核性髄膜炎や真菌性髄膜炎などが含まれる.急性に発症する中枢神経感染症である細菌性髄膜炎などでは,通常は発熱や髄膜刺激徴候を認めるので老年性痴呆などの痴呆性疾患と誤診されることはまれであるが,せん妄など痴呆に類似した症状で発症する場合もあり得る.特に高齢者の髄膜炎では発熱が目立たず,意識障害や精神症状だけが前景に立つ症例もあるので注意を要する.一方,髄膜炎·脳炎の後遺症として痴呆を呈することもある.本稿では細菌·真菌·原虫性感染症について病因別に概説し,その中で痴呆との関連について述べる.