B型肝炎ウイルスと他の肝炎ウイルスとの重複感染による劇症化

摘要

我が国における劇症肝炎の年間発生数は1972年で3,700例, 1989年で1,000例, 1995年で1,050例と推定されている.近年における劇症肝炎の減少はB型肝炎ウイルス(HBV), C型肝炎ウイルス￠HCV)が発見され, 1983年よりHBVワクチンが普及しはじめたこと,輸血用血液のスクリーニングに1989年よりHBc抗体とHCV抗体第1世代が, 1992年よりHCV抗体第2世代が用いられることとなったことが大きな一因と思われる.しかし,後述する治療法の進歩にもかかわらず,救命率は低く現在でも40%前後を推移している.このうち, HBV感染に関与する症例は,厚生労働省の2000年の全国集討では,急性型,亜急性型,遅発性肝不全(LOHF)討121症例のうち, HBV急性感染例26例,キャリア増悪例18例, B型判定不能例3例の討47例(38.8%)が報告され,原因が明らかな劇症肝炎のうち最多である.