タイ自動車産業の高成長の背景について--国家産業競争力政策、官民連携に関する現地レポート

摘要

タイには「豚は太らせてから食べろ」という格言があるそうだ。 表現としてはやや適切ではないかもしれないが、私はこれを現在の日本とアセアン（タイ）の関係に当てはめて考えることがある。 不良債権問題の処理に時間がかかり長期のデフレが続いてきた日本では、政府開発援助（ODA）への国民の批判が高まっていると聞く。 政府も日本企業の利益増進に直結する技術協力を優先する方針を打ち出した。 この間、JETROは国内の種々の批判を受けながらも、タイの一村一品産業支援をODA予算を活用して実施してきた。 タクシン政権の経済戦略を成功に導くのに何某かの貢献はできたのではないかと思っている。 しかし、ここで強調したいのは、そのことではなくて、外資主導の輸出振興と貧困層含めた内需拡大と複眼的なデュアルトラック·ポリシーを軌道に乗せることによってタイ国内市場と輸出の拡大が日系企業にどれだけの恩恵を与えたかを振り返ってみる必要があるということである。 途上国の市場はかつての植民地のように利益争奪の場にするのではなく、拡大に力を貸すことによってともにその恩恵を分かち合う、こうした考え方こそが、タクシン首相が提唱する真のイコール·パートナーシップの関係であり、日本の国益をかけたアジア戦略にとっても重要ではないかという気がするのである。共に生き、共に栄える、これこそ欧米イズムにないアジアの繁栄の本質ではないか。