自律分散的なクラスタ構成法における漸近安定性保証技術のMANET環境への適用

摘要

基地局や無線LANのアクセスポイントなどのネットワークインフラを使用せず，端末同士が直接接続してネットワークを構成することができるアドホックネットワークでは，ネットワークの負荷分散を目的としたクラスタ構成法が多く提案されている．我々はこれまで近接作用に基づく自律分散構造形成技術を提案し，アドホックネットワークにおける自律分散的なクラスタ構成法への応用について検討してきた．この技術は，有限時間内にクラスタ構造を構成可能である．しかしながら，特定の条件下では，その構造が将来にわたり安定して維持されず，クラスタ構造の漸近安定性を保証できない（クラスタ構造を維持できない）可能性が存在した．そこで，我々はクラスタ構造の漸近安定性を保証する技術を提案した．その評価はノードを2次元格子状に固定配置する限定的なネットワークモデル，および，ノードの分布量が時間的に変化しない特殊な場合に対してのみ行われている．本研究では，ネットワークモデルとしてノードの移動を考慮したMANET（Mobile Ad Hoc Network）環境を想定し，各ノードの分布量が時間と共に変化するより現実的なネットワークモデルを使って漸近安定性保証技術の効果を検証する．