移動環境における分散アレーアンテナシステムの可動式透過板の適応制御を用いた不要輻射抑圧法の提案

摘要

衛星通信の高速化のために，複数の小型アンテナを連携させることによりアンテナ利得を増大させる分散アレーアンテナシステム（以下，分散アレー）をこれまでに提案している．本論文では，移動局へ適用した分散アレーにおいて，単体アンテナのそれぞれの開口面に透過板を配置し，アンテナに対する透過板の角度を適応制御することにより，アレー合成後の不要輻射を抑圧する手法を提案する．金属のパッチやスロットを周期配列する周波数選択板を用いた透過板は，透過する電磁波の振幅や位相を変化させる．アンテナの開口に配置する透過板をアンテナに対して角度を変化させることにより，単体アンテナの放射パターンを変化させることができる．受信端に対する分散アレーを用いた移動局の向きに応じて透過板を可動させる透過板の適応制御により，アレー合成後に増大する不要輻射を抑圧することができる．提案法の初期検討として，16素子のパッチアレーアンテナを移動局の単体アンテナに用い，3アンテナをアレ一合成する分散アレーにおいて，提案法を用いることによりすべての領域において不要輻射を低減し，不要輻射量の累積分布関数が0.9において，0.7dBの低減効果があることを明らかにした．