音声生成研究の経緯と音声合成に向けた展望

摘要

音声生成研究と音声合成研究は，音声特徴と言語情報との関係を明らかにし，それを元に音声を人工的に作り出す共通の課題を有している．一方，音声信号を表現するモデル，音声を記述するパラメータ，言語情報から音声パラメータを生成する方法など，音声を作り出すアプローチにおいて両者には大きな隔たりがある．その背景には，音声生成研究の主眼が人間の発声発話機構を解明することであるのに対して、音声合成研究の主眼が自然でかつ多様な音声を工学的に作り出すという、両者の研究のねらいの違いが関係している．本稿では，音声生成研究の経緯と現状を紹介するとともに，両者のアプローチの違いを埋める上での問題点や課題など，音声合成に向けた展望について述べる．