加工シミュレーション技術の現状と展望：レーザアブレーション過程のシミュレーション

摘要

現代の最先端技術は異なった相にある物質の間の相互作用に関係することが多くなってきている．たとえば，半導体，液晶，磁気ディスクなどではレーザを用いて超微細加工を行う．固体にレーザを照射し，溶かし，蒸発させてゆく過程であるが，このなかには実に複雑な過程が含まれている．まず，加熱により固体が溶け，応力に支配された固体から粘性に支配される液体へと相転移する．さらに加熱されると今度は蒸発が始まる（図1(a)）．こうして，ほとんど圧縮されない液体から圧縮されやすい蒸気へと相転移する．このときの密度変化は実に2桁から3桁にもなる．このような変化が，数マイクロメートルオーダの薄い層で起こるのである．このときには，明確に定義された境界がない．今まで，固体であったものが液体になり，気体になって飛散してゆく訳である．溶接にしても同様で，熱伝導によって支配される浅い溶け込みの場合と異なり，わずかではあるが，蒸発する蒸気の作用によって深い溶け込みが実現されるために，レーザ加工と同様な過程がここでも存在する．