加工シミュレーション技術の現状と展望：原子論的生産技術における電子状態シミュレーション

摘要

21世紀の日本を担う先端産業や基礎科学からは，原子の大きさの精度が必要な，光·電子デバイスの創出が求められている．たとえば，光学素子では，X線顕微鏡や重力波望遠鏡，次世代EUV (Extreme Ultra-Violet)リソグラフィー等の高精度ミラーであり，また．電子素子では，SOI (Silicon On Insulator)やSiC，GaNを基板とする半導体デバイス等である．このような究極の形状·表面精度を有する“物”を創り出すためには，従来の製造技術を経験とノウハウの蓄積により改良していく手法では不可能であり，サイエンスに基づく新しい製造技術の開発が必要である．すなわち，製造プロセスに利用する物理·化学現象を，原子·電子論的立場から理解し，精密に制御することによって活用する「原子論的生産技術」とも呼ぶべき独創的な生産技術を創出する必要がある．