大気中の緩和吸収を考慮した波動伝搬予測

摘要

この報告では最初に減衰の無い系を伝搬する音波の基礎方程式の説明を簡単に行った。そのときの時間領域の差分法の適用方法，数値計算の高精度化について紹介をした。実際，減衰のない系での計算精度を上げることは，微小な減衰の影響を評価するのに重要である。大きな格子間隔でも近似精度のよいコンパクト差分において係数を調整することで数値分散を抑えることを試みた。また時間方向の積分については3段のSymplectic積分を適用した。TSP信号を音源として用いたインパルス応答予測値を用いて，計算手法による精度の違いを示した。次に非平衡熱力学の理論を応用して，音波の緩和吸収についての定式化の議論を行った。短い緩和時間や大きな流れ抵抗係数による減衰がある系で，時間領域差分法で計算する場合の安定化手法についての紹介も行った。また，音波伝搬による減衰の周波数依存性について実験式と差分法数値計算を用いた予測値の比較を行い，両者の結果に良好な一致を見た。