ヒューマンファクター 第2回 組織管理および集団作業における原則

摘要

ヒューマンファクターの対象は，1970～80年代には，エラーメカニズム解明やハード改善によるエラー防止技術など，主に「個人」を中心とした研究課題が主流であったが，チェルノブイリ専政を契機として，次第にソシオテクニカル(Socio-Technical) なアプローチが必要であるとの認識が共有されるようになった。 このような認識の下，ヒューマンファクター研究の大きなうねりは，「個人」から「チーム（小集団）」，そして「組織」へと拡大していくこととなった。 チームのパフォーマンス向上には，リーグシップやコミュニケーションなど集団心理や集団力学の知見が取り入れられたCRM(Crew Resource Management)などが実践されるようになった。 また，組織においては，JCO臨界事故や雪印食中毒事件などに見られるように，組織としての意思決定過程や管理などの組織要因が重大事故に関与したことが解明されるに及び，組織と社会（公衆·規制）の係わり方，安全優良組織の特性解明，組織内の安全管理，危機管理·情報管理などに基づく，包括的なリスクマネジメントへの取組みが開始されつつある。 今回の連載講座では，このような流れに沿った全体像を概説する。 したがって，詳細についてはそれぞれの引用文献を参照されたい。