今こそ深層防護の安全哲学の深耕を

摘要

福島事故の最大の教訓は深層防護の障壁が余りにも軟弱だったことである。その原因のひとつは本稿で検証した通り，深層防護の考え方が十分徹底していなかったことである。我が国もEUにならってまずはストレステストの中で深層防護の堅牢性を検証し，現状設計の妥当性を評価し改善点を抽出することが望まれる。その際，特に「異なる防護レベルの独立した有効性」を重点的に検証することが求められる。安全障壁の各層が“合わせ技”でなく，単独で事故の発生防止の機能を有していることを確認することである。安全設計の3つの障壁はその独立した安全障壁3つにより事故を防いでいることの確認である。さらに第4の障壁である過酷事故対策の検証も重要である。万一，今回の事故のように，第1，第2，第3の障壁が破られた場合は第4の障壁によってなんとしても外部への放射能放出を食い止めなければならない最後の砦だからである。この過酷事故対策は単にハードウェアの対策だけでは不十分である。なによりも混乱状態でのマネージメントが重要である。これは訓練によってのみ得られる技術であろう。この面の対策強化も早急に実施することが求められる。