道路交通騒音

摘要

この10年間の道路交通騒音に関わる我が国のトピックスとして，最も大きな影響を与えたのは環境基準の改訂と思われる。 すなわち，長年L{sub}50を中心に道路交通騒音の評価をしていたものを，欧米での潮流に従ってL{sub}(eq)による評価へと変え，基準値も変更したことである。L{sub}50とL{sub}(eq)の2つは数学的に本質が異なる評価指標で，騒音の測定·評価と環境アセスメントでの騒音予測の2つの場面にそれぞれ根本的な変化をもたらすこととなった。前者の測定·評価の場面では，従来のL{sub}50の膨大な計測値と新たな指標L{sub}(eq)による基準値間の比較や整合性の問題，旧環境基準値から新基準値が緩和か強化なのかの論争も加わり，今で言う文明の衝突や神学論争のような社会的議論の対象となった。 後者のアセスメントでの道路交通騒音予測の場面では，従前はL{sub}(eq)の予測値を求めた上に，車等間隔や観測点距離などの条件に基づく補正を加えてL{sub}50へと換算する2段階の計算過程を要していたのに対し，新基準に対処するL{sub}(eq)の予測では換算補正自体を不要としてしまった。 L{sub}50の予測は統計数学的に大変興味深い課題を多く含み，扱いは難しいながら格好の研究テーマであったが，環境基準の改定でテーマ自体が失なわれたと感じる向きも少なくないと思われた。