小麦粉食品を対象とした品質向上技術の展開：1．食品素材·添加物の利用－1.2 おいしさを創るハイドロコロイド

摘要

食品はヒトの食欲を増進して食生活を豊かにするだけでなく，人々の健康に貢献するものでなければならない．食品に求められる機能性には，栄養機能（一次機能），おいしさや嗜好性などの感覚機能（二次機能），および健康維持などの生体調節機能（三次機能）がある．最近，青少年犯罪の増加と関連して，「食育」の重要性が見直されている．食事を共にすることで気持ちが通い合うことは誰もが認めるところであり，食には精神的あるいは文化的要素がある．食品の栄養性や機能性が重要であることはいうまでもないが，ヒトが喫食して幸福感や滴足感を感じてこそ食品であり，したがって食品はおいしくなければならない．医食同源という言葉もあるが，感覚機能の重要性において食品と医薬品は決定的に異なる．「良薬口に苦がし」ということもあるが，誤嚥の原因の重要なものとして，嫌なものを無理して摂取させることが挙げられている．この場合，美味しいことは摂取行動における安全，そして健康に直結している．本稿では，澱粉の基礎的性質について概説した後，食品多糖類による澱粉の物性制御·改質について，これまでの研究報告をまとめる．