自動車の振動騒音技術をあらためて眺める－情緒編

摘要

今日の産業をリードしているものは何かと問われれば，機械工学とか設計学とかの製品に近い応用学ではなく，実はソフトウェアであり，その源を作り出している数学，物理学ではないかと思案しています．この小文をお読みになっている方は，著者の察するところ数学，物理，コンピュータサイエンスなどに秀でた知識と経験をお持ちのはずです．しからば，そういう皆様に自動車の振動騒音問題の解決を頼むと，たちどころに解が得られるかというとそうでもなさそうです．事実，勤務している大学の食堂で，親しい数学教授と話していると，私のような自動車産業の現場で育ってきた人間がまず現象を把握し，基礎方程式を作るところまでやらないと，数学者ほおでましいただけないようです．個々の例をここでご紹介するのは紙面の制約から難しく，細かな説明が必要になるのであきらめ，他の分野の方に肩のこらないお話しとして，自動車技術の特徴とその中でも振動騒音技術の特徴を拙文にてご紹介しましょう．