構造材料の腐食,環境脆性評価(6)－腐食疲労の特徴と機構

摘要

前稿では，水素脆化について，(1)水素脆化は環境から材料に侵入した水素あるいは製造過程で材料中に存在していた水素が原因で生じること．(2)遅れ破壊は切欠き，き裂先端の塑性域に水素が集積し生じること．鉄鋼材料において水素はマルテンサイトラスや非金属介在物などに集積すること．(3)遅れ破壊のき裂は単一き裂の形態をとることが多く，破面形態は水素濃度，応力拡大係数に支配され，粒界，擬へき開およびディンプル破面を呈すること．(4)遅れ破壊は基本的には応力腐食割れと同様な手法で評価し，防止対策としては材質変更，構造変更，環境改善，表面処理などが有効であること．(5)水素侵食は不可逆的水素脆化でメタンバブルの発生，成長，粒界割れにより生じ，水素侵食の発生の有無はネルソン線図により判定すること．などについて述べました．本稿では繰返し応力により生じる環境脆性である腐食疲労の機構と特徴についてとりまとめてみることにします．