トータルコストダウンのための高能率切削工具〈総論〉高能率切削工具の技術動向

摘要

21世紀初頭における切削加工の技術的動向は，地球環境保全の立場からコスト，資源，そしてエネルギーのミニマム化が叫ばれている。 現実問題としては，以下の項目が挙げられる。① 高リサイクル性や低摩擦性が実現できる地球にやさしい工具材料の開発，② 加工時間の短縮や工程の集約化（フレキシブル化），③ 高精度ドライ加工の成熟，④ 医療分野を意識した微小精密部品の加工，⑤ 固有ニーズに合わせたオーダメイド加工，など，高能率化と地球環境に配慮したものづくりが考えられている。 しかし，④の微小部品加工では工具径が小さくなるため高回転が必要であるとか，⑤のユーザーニーズ多様化はますますのフレキシブル化が必要（フレキシブル加工ではロット当たりの製品個数が少なくなる反面，生産品の種類が多くなるため，どうしても生産能率が悪くなる傾向が強い）となり，さらなる能率化が必要となっている。 本稿では，高能率切削工具の技術動向として（1）削り速度の高速化とドライ化をターゲットとした高能率工具材料，（2）切削時の信頼性向上に向けた（工具交換時間や休止時間短縮に伴う）能率化，そして（3）医療分野を意識した小物部品加工の能率化について解説する。