ころがり接触における弾性流体潤滑油膜の基本問題－純粋なころがりの場合（上）

摘要

EHDプロセスを流体の法則に基づいて解明しようとすれば，1つの仮説に到達せざるを得ない。 この仮説によれば，純粋なころがりの場合，潤滑剤の流れはすきまに入る前は乱流であって，すきまに入ると圧力ピークに到達するまで層流になる，そして圧力ピークを経過すると乱流に戻る。潤滑剤はころがり物体の表面に付着している境界層によって引きずられてすきまを通過する。 こうして圧力の山が形成されるため，圧力が上昇する領域においては潤滑剤の流れの中央部は境界層流に逆らって流れ，圧力が低下する領域においては境界層流に先だって流れる。したがって，すきまのさまざまな場所における流れ条件は異なってくる。 ここで注目すべきは圧力ピークであって，それが形成される原因は，すきま壁面から流れがはく離することに求められる。 いくつもの仮定のもとでEHDすきまが数学的に表現されている。 決定的な仮説が成立するのは，こうしたさまざまな仮定を考慮に入れていない場合だけである。そのような考え方に基づいて，ここに示したような壁面の表面せん断応力の発生とその分布ならびに材料疲れ応力に関する考察が行われなくてはならない。