だから,機械はおもしろい！第5回 非対称設計のすすめ

摘要

内容はともかく，筆者が面白かったのは能楽堂である。図1に示すように，能舞台を囲むように，四分の一の円形に観客席が並べてあった。昔，銀座に並木座という映画館があった。スクリーンに向かって右手に柱があってその後ろは見えないという劇場で，それを思い出した。そのような例外を除けば，舞台正面に対して観客席を左右対称に並べた劇場しか見たことがなかったから，この非対称の劇場は驚きだった。歌舞伎も能と同じように，舞台に向かって左側だけに花道が伸びているが，以前見た1836年完成の金比羅大芝居でも，花道を除くとどこもきちんと対称形に升席が並んでいた。この日の鑑賞では脇正面という観客席に座り，左側の90度側面から演者の横顔を見た。この席は柱が邪魔ということもない。かえって，橋掛から入場する演者から地謡や笛，鼓まで，能舞台の全体が見渡せるので，実に良い席だった。