新しい視点で学ぶ弾性力学入門：第3回 厚肉円筒（弾性力学）と薄肉円筒（材料力学）

摘要

関西電力の美浜原子力発電所3号機（福井県美浜町，加圧水型）で8月，作業員5人が死亡し，6人が重軽傷を負うという国内の原発事故としては最大級の災害が発生したことは記憶に新しい。 2次系の冷却水が流れる復水管の一部が流れにより配管内部が磨耗して減肉し，やがて流体圧力によって破裂，約140℃の噴出した蒸気が作業員に降り注いだ（図1）。 このように，プラントにおける配管やタンクなどの事故は頻発しており，圧力を受ける管や容器の肉厚の選定は重要な設計要素である。 しかし，配管や容器類は標準化されたものを使用する場合も多く，種々のリスク要素を条件に入れて圧力と肉厚から安全性を検証することは，重要である。 また，焼きばめに代表される圧入作業は，機械部品の組立てには頻繁に使用される。 例えば，ベアリングをベアリングヒータで熱しておいて，軸にはめ込むなどの作業があるが，配管問題と同様に重要となるのが圧入の際の応力の関係で，これは円筒問題の応用と捉えることができる。円筒問題はまた，弾性力学と材料力学の違いを認識する上でも重要である。 そこで，今回は前半において厚肉や薄肉円筒の問題の解法について考え，後半では間違えやすい平面ひずみと平面応力について円筒を用いて説明し，円筒問題の応用演習も合わせて行う。